コロナショックを、単なる“危機”と認識してはいないでしょうか。
危機は同時にチャンスでもあり、その後の事業の抜本的な改革と成長機会をつかみ取る可能性もあるという側面から、目を背けていないでしょうか。
私も、経営上のトラブルがあった際には、その火を消すのに必死になってしまうあまり、その先の事を考える余裕がないというのが本音ではございます。
勿論、“チャンス”と言われてもあまりピンときませんでした。
本書は、数多くの事業再生案件を手掛けている経営競争基盤(IGPI)会長の冨山和彦さんの圧倒的に豊富な経験を基に、企業が直面する危機の正しい乗り越え方と、リーダーに求められる姿勢について書かれています。
コロナショックだけでなく、経営の危機に直面したことのある経営者や、そこで働く将来のリーダーにも是非読んで頂きたい一冊となります。
危機到来時になってからでは遅い、知っておきたい4つの財務数値
企業が危機に直面する前に、しっかりと理解しておきたい財務数値として、本書に記載のあった内容と、私の金融機関、コンサルタントとしての社会経験で学んだものが、全く同じでした。
その財務数値とは、手元現預金、自己資本、借入金、営業CFとなります。
「借入金があると危機を迎えたときに自分の首がますます締るのでは。」と心配される方もいるかと思うのですが、ここでの意味合いとしては、危機が到来しても借入ができるような、銀行との信頼関係の構築を指します。
実際に借入があってもなくても、平時より銀行と財務内容について話をしていて、信頼を積み上げていることが大切なアクションとなります。
ファイナンスについて詳しい方の中には、「余剰現預金は株主へ還元し、よりリーンな経営をすべきである。」と主張される方もいらっしゃるかと思います。それも財務指標の向上を目指すうえでは必要なのかもしれませんが、万一、キャッシュがショートし、その企業が倒産したときに、投資した株式が紙切れになって困るのは、紛れもなく株主となりますので、手元の現預金は危機に備えて手厚く持っておく必要があることについて、理解しておいて頂きたいです。
資金繰りについて
「利益は見解、キャッシュは事実。」という言葉をよく金融機関在籍中に、上司より言われていたのが、つい昨日のことのように思い出します。
本書でも、危機に直面した際には、何よりも先に資金繰り表を作成し、キャッシュの増減を追いかけることの重要性について記載がありました。
起業経験や、オーナー経営者として事業をしたことのある方は、キャッシュの入りと出を自然に見ているので、逆に何を言っているのか分からないかと思います。
しかし、長年企業で働いていると、人はPLの数値しか見なくなるのです。
そして、PLの利益がキャッシュを生み出しているものだと錯覚していきます。
(ちょっと言い過ぎました。)
平常時より、キャッシュフロー経営をすることを心からお勧めします。
最後に
やはり、修羅場をくぐり抜けている人の本は、書いてあることの重みが全然違いました。
“コロナショック“という側面のみではなく、企業再生、イノベーションを起こす組織作りに向き合うための参考書として、企業のリーダーや、将来のリーダーは必読書ではないかと思います。