こちらの本はアメリカにおける成人教育、人間関係研究の先覚者であり、話術並びに人間関係の新分野を開拓したデール・カーネギー(Dale Carnegie)の「How to Win Friends and Influence People」を訳した本となります。
人間関係を避けては通れない現代社会を生きていく上で、心得ておくべき他人との接し方について実例を基に分かり易く書かれた本です。
本を読み終えた私の感想としましては、“もし社会人1年目で読んでたとしたら、仕事の成果は間違いなく改善されていただろうな。そして、若かりし頃の自分の尖った意見が原因となるケンカやトラブルは避けられたであろうことも間違いない。
ただ一方で、ちょっとクセのない(=あんま面白くない)若者になっていた可能性も大いにあるので、30代になって読んでちょうど良かったかもな。”といったところになります。
「人を動かす」を読んだきっかけ
この本を読もうと思ったきっかけは二つあります。
一つ目は「渋谷ではたらく社長の告白」というこのサイトでも紹介させて頂いた本の中で、サイバーエージェントの藤田社長が、学生時代にオックスプランニングセンターでバイトをしており、そこで出会った渡辺専務という方が、「将来経営者になりたいんだったら、感性を磨け。
本を読んで、映画や演劇などをたくさん観ろ」、「本だったら、カーネギーの『人を動かす』。これは必読だ」と言っており、藤田社長もその本を読み、その後の営業活動、マネジメント、リーダーシップにおいて多大な影響を受けたと書いてあったこと。
二つ目は上記のきっかけで本屋に出向き、実際に本を手に取って見たとき、「どこかでみたことあるな。あっ、これ父親の本棚にあったやつだ!」と懐かしい思いも相まってそのまま購入し、読むことにになりました。
D・カーネギーの経歴が自由過ぎる
D・カーネギーは1888年にミズーリ州の農家に生まれ、州立の学芸大学に通います。大学時代には異常な劣等感に悩まされており、その克服のために弁論を研究したそうです。
大学卒業後には教師、セールスマン、食肉会社員、行商人など、雑多な仕事を経験するも、1911年にはニューヨークに出て演劇研究所に入り、地方回りの劇団に所属していました。
劇団の仕事もあまり長続きはせず、やがて彼はニューヨークへ戻り、トラックのセールスマンをはじめました。そのうち、自分に最も適した仕事はやはり大学時代に研究した弁論術だと気付き、YMCAの弁論術講座を担当することになったそうです。
はじめは、一晩に二ドルの報酬しか得られなかったそうですが、次第にこの講座の受講者が増えて、一晩の報酬が三十ドルとなり、とうとう成人教育に自己の適性を見出したそうです。結構自由だな。笑
これは完全に余談ですが、カーネギーが世界周遊旅行の途中に関西を訪れ京都から香港へと向かった際に、「日本で一番印象深かったものは?」という質問に対し、「それは日本人です」と言い残して船に乗ったそうです。
本では“人間に対する彼の関心の深さを示す言葉”と表現されていましたが、正直、結構クセ強いなと思ってしまいました。笑
“人の立場に身を置く“という言葉の深さに気付く
あるプロジェクトで、私ともう一人のメンバーで九州へ出張に行くことになりました。当時、プロジェクトが困難を極め、死にそうだった私にとって空港の待ち時間はPCを開くことのできない唯一の休憩時間でした。
そんな中、ふと雑談をしていると、チームメンバーが私に「世の中にはとても頭のいい人がたくさんいるけど、人間はどこまでいっても感情の生き物ですからね。」と言っていたのが耳から離れない時期がありました。(※くれぐれも、この言葉は私への辛辣な意見ではないです。笑)
仕事をしているときは、ついつい頭でっかちになり、物事をロジックや整合性などだけで判断してしまうことが多く、一緒に働く相手の気持ちを無視したような指示や意見をしてしまい、結果として本来達成すべき目標に対して逆行するような行動をとってしまっていることに気付かされました。
人を動かす三原則の三番に“人の立場に身を置く”という章があり、ここではまさに上記の事に気付かせてくれる内容となっています。勿論、他の章でも基本的には人と付き合う上でどのような身の振り、言葉を使っていくべきかについて詳しく書かれています。
議論で相手を打ち負かしても、その人の意見は変わらないという事実
議論好きな人っていますよね。相手を徹底的に理詰めして、議論を制して物事を進めてしまう人。この人は一見、頭がキレ、仕事のできる人に見えますよね。
しかし、議論はほとんど例外なく、双方に自説をますます正しいと確信させて終わるものであると本書には記載されています。私も同感です。笑
そして議論に勝つ最善の方法はこの世にたった一つしかないという。それは、“議論を避けること”であると、いや、ホントそれしかないわ。笑
最後に
どうやったら人が動いてくれるか。人が気持ち良いリアクションを取ってくれるか。これはムズイですよね。あまり考えすぎてしまうと何も喋れなくなります。笑
人間関係の入口としての最低限のマナーとして、そして“ここぞ”という場面でこの本に書いている所作ができる大人になりたいなと。(時間置いてもう一回読もう。)